クリスマスのおくりもの 小さな奇跡の物語2 もみの木

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もみの木

 その丘に、三本のもみの木が育ち始めました。
 両側の二本はすくすくと育ちましたが、真中の一本はひ弱で、今にも枯れそうでした。  

 そこで両側の二本はいつもこう言うのでした。
 「こいつはだめだな。」
 「ちびで、みっともないしな。こんなやつはほおっておいて、おれたちだけはのびようぜ。」

 両側の二本のもみの木は競って上へ上へとのびはじめました。

 そのうち、二本は自分こそがもっともりっぱなもみの木であると言うようになりました。
 「私のこの枝ぶりを見たまえ。この世界でどう見わたしても、このような美しい姿は見たことがない。」
 「ばかを言え、それは私の方を見ていないからだろう。私の方が美しい。」
 「何を言う。このできそこないが。」
 「何を言う。このできそこないが。」
 お互いはいつまでも言い争い、ゆずろうとはしませんでした。

 二本のもみの木の根元では、もう一本の小さなもみの木が、そんなけんかを見上げながら、ため息をついていました。
 「ああ、あんなに言い争わなくても、二本ともうらやましいぐらいりっぱだなあ。ぼくなんか、あの一番下の枝にも届かないくらい小さいし、鳥だってとまってもくれないや。」

 まん中の小さなもみの木が見上げると、両側の二本のもみの木には、いろんな色をしたきれいな鳥たちがやってきていました。それは、まるで天使たちのようでもあり、大きなもみの木は鳥たちの天国のようにさえ見えたのです。

 やがて冬が来て、雪の舞う頃になると、それらのもみの木はこの上もなく美しい衣をまとったようになりました。
  

 「なんて美しいんだろう。ぼくもあんなにきれいな雪の衣をきてみたいものだなあ。」
 まん中の小さなもみの木がそう言うのも無理はありませんでした。
 なにしろ、両側のもみの木の枝にかくれて、その小さなもみの木には、雪さえ降りかからなかったのですから。
  

 大きなもみの木たちは、ますます鼻高々になりました。
 「えっへん、おそれいったか。」
 「えっへん、どんなもんだい。」

  

 ところが、その年は寒さがきびしく、吹雪になる日が続きました。
 大きなもみの木たちは、体が大きいだけに、吹雪の風当たりも強く、とても息ができないほどになったのです。
 「おおい、おまえの枝がこちらにさわって痛いぞ。」
 「おまえこそ、そんなに曲がって、わたしの枝を押さないでくれ。折れてしまうじゃあないか。」
 「うう、くるしい。吹雪で息がつまりそうだよ。」
 「私もだ。」

  

 吹雪の一夜が明けると、丘の上の二本のもみの木は枝が折れ、お互いにみじめな姿を嘆(なげ)いていました。

  
 その丘に、ひとりの男が登っていきました。
 彼は、クリスマス・ツリーにするもみの木を山に探しに来たのです。
 そして、もみの木の丘にたどり着くと、吹雪で折れたもみの木を見てがっかりしました。
 「今度の吹雪でもうみんなやられてしまった。あんなに大きな木までが折れるようじゃ、ツリーにするような小さな木は一本も残ってはいないだろう。」

 あきらめて、山を降りようとしたときです。

 彼はどこかで何かが光ったように思いました。
 そこで、もう一度、大きなもみの木のところまで行ってみました。

  

 大きなもみの木のかげで、なにかが光っているのです。

  

 不思議に思って、大きなもみの木の幹から覗(のぞ)いてみると、それは思いもかけない美しいもみの木があったのです。

  
 「これは、妻や子どもたちも大喜びするぞ。」
 小さなもみの木は、枝に少しだけついた雪に小さく透明な雫(しずく)をたらしていました。それは朝日を受けて、まるでクリスマス・ツリーの飾りのように輝いていたのです。

  

 男は、そのもみの木を切るのがおしいので、根から掘って持ち帰りました。

 そして、家の庭に植えて育てることにしたのです。

  

 ☆ ☆ ☆

  

 その後、その庭で育ったもみの木は、毎年クリスマスになると街中(まちじゅう)の評判になります。
 というのは、その木にかぎって、どこからともなく見たことのないきれいな小鳥たちがやって来るという うわさが あるからです。

  

 そして、よそ行きの服に着飾った子どもたちをつれて、遠くからでもそのツリーを見に来る人たちがおおぜいいるということです。
 (完)

 この本は「パブー(ブクログ)」で出版されていますが、今のところ無料でダウンロードできます。

 版権所有 (c)copyright 2001 by Masakazu Takahashi. 高橋正和。<不許複製>

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